ファッションに正解はないようで、実はあるらしい(ファッション誌『Zipper』)


洋服はいつも思い出とともにある。


あの夏の日、私はどの服を着ていたんだろう。


じゃあ、こないだみんなでタピオカを飲んだ日は?


あの冬のデートは?


修学旅行は?私服だったっけ、制服だったんだっけ。制服だった気がするなあ。



何が言いたいかというと、人は大概において服を着ていて、どの記憶にも洋服はセットでついてくるはずだということ。爛れていないかぎりはね。


洋服には個性が出やすい。人は好き嫌いを持っていて、洋服は見目にわかりやすいがために、それが他人に伝わりやすい。食べ物の好き嫌いは、パッと見ただけではわからないのに。



私は服が好きで「好きなものを好きな時に好きなだけ」をモットーに日々洋服を着ている。


そして、私の洋服の趣向の原点は『Zipper』という雑誌にある。


洋服の趣向だけでない。考え方とか、ものの選び方とか、たぶん今に通じる色々なもののルーツが『Zipper』にあると思う。

今回はそんな『Zipper』の話。


今回は『Zipper』の「1993年6月創刊号」と「2018年WINTER休刊号」の表紙の見出しを比較


◎Zipper

『Zipper』(ジッパー)は、1993年に祥伝社が創刊した10代後半向けの女性ファッション雑誌。10代後半の女性を対象に原宿系ファッションなど、ボーイッシュでカジュアルなファッションを提案する青文字系雑誌である。誌面には個性的で奇抜なファッションが登場する。(Wikipediaより : https://ja.wikipedia.org/wiki/Zipper)


◎対象

『Zipper』1993年6月 創刊号

『Zipper』2018年WINTER 休刊号(現在も休刊中)

表紙の見出しから抜粋


◎創刊号(1993年6月)

「(保存版)スパッツVSカラージーンズ 9千円シェイプアップ選手権」


「(5㎝ポックリでグランジ変身さ)サボ×ロングタイト」

「(デニムもノースリーブ主義)Gジャン&カットオフ血統書」

「(完全攻略マップつき)JリーグNBA(5千円)で見つけ」

「(上級者)『ヒステリックグラマー』と『ナイスクラップ』にハマる!」

「Swatch(クロノスキューバ)安いヨ探検隊」

「L.A.ギア、ナイキダンススニーカー61」


「『BOON』のガールフレンド誌!」

「WE ARE ZIPPERS 高橋リナ・奥山佳恵・渡瀬マキ・ZOO」


◎休刊号(2018年WINTER)

「Zipper FOREVER!」


「HOW TO 今っぽ顔?」

「ゆるめるモ!あののサブカルガールVSメンズ服」

「(山下美月&中村麗乃(乃木坂46)他)it GIRL の #MYメイク」

「(#NEWカラーLIP #質感チェンジITEM #強めEYE がカギ!)旬のおしゃれ顔になる!今ドキメイクFILE」

「(韓国発がお手本!)コリアンガール風♡甘ヘアアレンジ!」

「高橋愛ちゃんの顔になりたい!」

「(市川美織(NMB48) hibiki(lol) BiSH)ミレニアルズの #フォトスポットSNAP」


「篠崎こころ、全部見せます!ここカジ最前線☆」

「瀬戸あゆみ&mimの冬→春着まわし計画」

「(パチパチズがお手本!おしゃれ私服で"いいね!"GET)フォトジェニックコーデで冬じたく♡」

「(ふわもこアウター、ビスチェ、ボトムスレイヤード.etc.どう着る?)おしゃかわ重ね着正解コーデ!」


◎考察

一番最初に思ったのはそんなに変わらないなということ。同じ雑誌であるからか、やはり、どことなく似ている感じがする。


どちらの見出しにも共通しているのは、漢字・平仮名・カタカナ・英字がごちゃまぜであることだと思う。


「洋服」自体が輸入されたものなので、「ジーンズ」「アウター」など洋服用語はカタカナで、「選手権」「着まわし計画」など企画自体は漢字・平仮名の日本語で表記され、これらが組み合わさっている場合が多いからなんじゃないかと思った。

2018年の方が「MY」「GET」などの英字が多いのも特徴。

その単語の一番正しい表記をしているだけなんだけど、受け取る印象としては、ごちゃまぜだとポップ!な感じがするのだと思う。


全部漢字、全部英語より読みやすくなると同時に、本や新聞などにはない違和感があって、その違和感に新しさとか、楽しさがつまっているんじゃないかと思った。


2018年の方に特徴なのは「誰」をお手本とするべきかの主張が強いところだ。

ほぼ全部の見出しに人名が入っていて、誰をお手本とするべきかーー言い方を変えれば、誰の真似をすれば正解かーーが書かれている。


そこで、『Zipper』が休刊になってしまった理由はここにあるんじゃないかなあと勝手に憶測を立てたい。


『Zipper』は個性派の青文字雑誌(『anan』『non-no』『vivi』など赤い文字で書かれた王道系雑誌に対抗してある言葉)で、出でくるパチパチズと呼ばれるモデルさんたちは、みんなほんとに変わったファッションをしていた。

でもそれは、無理して目立ちたいから奇抜な恰好をしていたわけじゃなくて、本当に、そのファッションが好きなんだろうなと思わせてくれるものだった。

みんな、その「気持ち」に共鳴して『Zipper』を読んでいたんじゃないかなあ、と思う。


少なくとも私はそうだった。


まさにこの雑誌に載っている通りのコーデをしたい!この雑誌には正解が載っているから買いたい!と思って買っていた人は少なかったんじゃないかと思う。


先月一刊だけ復刊した『Zipper』で私にとっての神様みたいな人ーーモデルの瀬戸あゆみちゃんーーがこんなことを言っている。


「いまは個性派な女の子たちのためのファッション誌ってあんまりないし、周りにそういう子がいないとなかなか冒険できないと思うけど…。でも、ファッションは自由に楽しむものだと思うし、みんなもっと挑戦していって欲しいなって思います!」


私も瀬戸あゆみちゃんみたいなファッションが、そりゃあできるものならしたかったけど、べつにそれだけが正解ではなかった。

あゆみちゃんの考え方とか我が道を行く感は、絶賛真似したかったけど。

正解を求め始めた読者に『Zipper』は応えたってことなのか。


ファッションに正解はないようで、実はあるらしい。


けど、その正解を壊して、それでもなおピッカピカに輝いていたのが(私の中では今でも輝いているが)『Zipper』だったのかなあ、と思う。


2018.7.4  ムラタ









市民とメディア

武田ゼミ 2年 ムラタ 「市民とメディア」の課題より市民メディアを実践する。 ◎テーマ「見出し」「言葉」 ある一つを対象とし、 それらの見出しを比較する。 言葉の選択によって、 読者が受け取る印象は違うのではないか と考えたため。

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